「VR」で何が得られるのか?
昭和時代とは異なり、令和になって格闘技の試合もYouTube を使えばいろいろと観ることができます。
本気で画像分析をすれば、選手の「クセ」を見つけ出すことも可能ですし、意外と「クセ」は直すことができません。
そんな「クセ」をイメージではなく「感覚的」に体験できれば、当然ですが試合前のトレーニングとしては有益です。
VRカメラ越しに、対戦相手と向き合い、キックを繰り出すタイミングやパンチと見せかけたフェイトなどを繰り返し体現できたら、実際の試合に勝てる確率も上がるでしょう。
面白いのは、画像分析から3D化できれば、練習段階で対戦相手の再現スピードを変更できます。
例えば踏み込みスピードの早い選手が相手でも、事前に1.2倍の速さで練習できれば、実際の試合では「そんなに速く感じない」でしょう。
「AI」による「クセ」の修正!?
朝倉未来選手の試合を観ていると、少し興味深いことに気付きました。
日沖発選手との対戦では、朝倉未来選手の得意としているエリアに日沖選手が「入って行く」と言うパターンが多いように感じます。
つまり、朝倉未来選手はより自分のストロングポイントで勝負していることになります。
一方の斎藤裕選手との対戦では、序盤だけを観ると同じような展開に思えますが、斎藤選手は朝倉選手の前手を触るだけですぐに危険エリアから遠ざかります。
つまり、朝倉選手が勝ってきたパターンを崩す方法として、朝倉選手を「動かした」のです。
結果的に、朝倉選手は痺れを切らしてハイキックやカウンターを繰り出しますが、次々に空を切りました。
クレベルコイケ選手との対戦では、十分に朝倉未来選手が得意としてエリアであったものの、仮にキックした足を掴まれ、寝技に引き込まれることを警戒していたのでしょう。
思うように攻撃することができません。
しかも、キックを出さなくった朝倉選手では、むしろクレベルコイケ選手の方が射程距離も長く、前足の膝や内腿あたりをかなり蹴られています。
さらに序盤で引き込まれた結果、ストロングポイントでも完全に後手を取ることが増えます。
当然ですが、確率的に考えても、ワンパンでKOできなければ試合をひっくり返すことができない状況です。
例えば、このような分析をAIに行わせて、距離やタイミングでどう戦うと勝ちに繋がり、どうなってしまうと負けを呼び込むのかを瞬時に表示できれば、フィジカルトレーニングとの相乗効果もあります。
フットワークが使えない選手の多くは、リングの角に相手選手を追い込みます。
そうすることで相手選手の動きを封じ、得意な距離で打ち合えるからです。
これが八角形のケージになってなってしまうと、常に左右に逃げられることになり、フットワークの悪さは勝敗に影響するはずです。
UFCでは
ライト級チャンピオンだったヌルマゴメドフ選手の試合では、得意のグラップリングに持ち込むために、相手選手の距離を潰そうとするようなフェイントが多く見られます。
相手選手にすれば、自身の距離をいかにしてキープするかが課題なのでしょう。
しかし、再三のアタックにミスを犯し、相手選手はグラップリングに付き合わされます。
そして体力をどんどんと奪われてしまうので、2度目3度目は、1回目以上に簡単に突破されてしまうのです。
つまり、どんなタイミングで仕掛けてくるのか、どんな攻防をすれば距離を稼ぐことができるのかを徹底的に訓練するのとしないのでは勝算は違うはずです。
ゲームを活かすと言う方法は?
最近のゲームはとてもリアルです。
技に関して、どれだけ再現性があるのかは分かりませんが、例えばゲームメーカーが本気でプロ格闘技とVRで対戦できるようなゲームを開発してくれたら面白いことが起こりそうです。
さらにそんなゲームの要素を拡大する先には、プロ格闘家もトレーニングに代用できるシュミレーターができるでしょう。