斎藤裕選手はなぜチャンピオンなのか?

 格闘技ではなく勝負論として斎藤裕選手を考えてみた

こみちは格闘技の経験はほとんどない。

子どもの頃に少しだけ近所の道場に通っていたことがあるが、弱過ぎて行くのが嫌だった。

そんな昔話はさておき、YouTube のライジンチャンネルで斎藤裕選手の試合をこれまでにも観てきたが、「勝負論」という視点で確認してみた。

選手は自身の得意としている技や攻撃があって、それによって相手との間合いも決まってくる。

いろいろな選手を見ていると、見合っている状態から実際に攻撃を繰り出した瞬間にほとんど移動距離がないように感じる。

つまり、そんな選手は、全体的に間合いから攻撃までがコンパクトなのだ。

一方で、例えば堀口恭司選手などは、とても距離が長い。

それゆえに、遠くから相手に飛び込むように移動して、瞬時に攻撃へと繋げている。

そんな風にされると、間合いが合わない選手は攻撃することもできずに、堀口恭司選手のタイミングに付き合わされてしまう。

それだけでも試合では不利な条件で戦うことになるから、勝てる試合も勝てなくなるだろう。

例えば、斎藤裕選手と朝倉未来選手の試合は壮絶だった。

前評判は朝倉未来選手にあったのかも知れない。

しかし、結果は斎藤裕選手が勝利した。

間合いという視点で二人の試合を見た時、朝倉未来選手はボクサーのように弾むような仕草は見せず、また自身の距離が来るまで静観している。

斎藤裕戦では、長い距離で攻撃できるハイキックもあるが、その距離よりも遠いところに陣取る斎藤裕選手には届かないし、逃げられてしまう。

それよりも短いパンチが届く距離では、朝倉未来選手の素早い回転力は有効だった。

しかしそれも2ラウンドに入って、斎藤裕選手がタックルを使い始めると、かなり勝手が違ってきたように思う。

いずれにしても、斎藤裕選手の魅力は相手が不得手としていている領域で戦えることではないだろうか。

石渡伸太郎という存在

YouTube を観ていて興味深いことは、斎藤裕選手のサポート役として石渡伸太郎氏がいることだ。

彼は先日の井上直樹選手との敗北を機に引退を表明した四天王の一人と言われる実力者だった。

あえて触れるなら、井上直樹選手もまた長い間合いと得意としている。

しかも、打撃力だけでなく、寝技にも長けていると評判だ。

つまりそんな井上直樹選手と戦うには、長い間合いからの攻撃に備える一方で、組みつかれてからの寝技にも注意しなければいけない。

そう考えると、自身の攻撃が割とコンパクトになってしまう選手は、不利と言えるだろう。

石渡伸太郎選手は相手と向かい合った時に負けない強さがある。

踏み込んでからの左右のパンチは、一撃で相手に大きなダメージを与えられるだろう。

実際、井上直樹戦でも相手に片膝をつかせるシーンがあり、石渡伸太郎氏の圧勝かと思った。

しかし、その後の展開や試合の各選手のコメントから、片膝をつかせるシーンで石渡伸太郎氏もまた強打を受けていたようだ。

それが原因で、畳み掛ける井上直樹選手の攻撃に沈んでしまったということだろう。

石渡伸太郎氏の場合、選手としての魅力だけでなく、人間性や策士としても興味深い一面を持っている。

最近、元谷裕紀選手も新たに加わるなど、石渡伸太郎氏の元に有力選手が集まっている。

元谷裕紀選手といえば、打撃もできるが寝技が得意な選手。

つまり斎藤裕選手の次戦の相手に備えた対策も兼ねて、元谷裕紀選手をはじめとした寝技の強い選手や指導者をブレーンに巻き込んでいるからだ。

何より面白いなと感じたのは、石渡伸太郎氏のチャンネルで見る斎藤裕選手のクレバーで学習能力が非常に高い一面だ。

つまり、対戦する選手に合わせて戦略を練り、そのために必要なトレーニングを通じて、より勝率の高い戦い方ができる選手なのだろう。

そのことを考えると、例えば「再戦すれば斎藤裕選手の弱点をつける!」と考えるべきではなく、試合ごとに最適化された状態で仕上げてくると思った方がいい。

次戦も注目されるだろうが、噂される選手はあまり長い距離を有効に使う選手ではないみたいだから、長い距離を使った外からの攻撃を使うのだろうか。

何より斎藤裕選手は、サッカーボールキックでも躊躇なく繰り出せる優秀さがある。

つまり、寝技に引き込んだ相手に対しても、寝技で向かい打つのではなく、パウンドを叩き込める潔さも特筆するポイントだ。


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