そもそも写真そっくりの絵は
トレース(下絵としてなぞる)など、方法はいくつもあります。
それは叶えたのは、カメラ(ここでは画像)が身近なものになって、絵を描くことが技術力ではなくなったからです。
それこそ、絵を描くことが苦手だとしても、トレースを使うと誰でもこみち以上に上手く描けるはずです。
多くの人は、何らかの形で、下書きを描けるまでにデッサンなどを繰り返し、見えたままをどう描けばいいのかを訓練しています。
絵が上手いか下手かの差は、素人レベルであるなら、この繰り返しに尽きるかもしれません。
なので、描くことが好きで描き続けた人はやっぱり上手く描けますし、慣れていなければそれなりになってしまうでしょう。
一方で、「トレース」や「グリッド法」を使えば、そんな手間さえも不要で、極端な話、撮影した画像のピクセルを描けば、写真そっくりになるのです。
このピクセル単位を倍の4、さらに9、16と増やし、理論上は紙一枚を単位にすれば、これまでの訓練で求められたレベルと同じになります。
言い換えると、デッサンの模写レベルは、紙一枚を一つのピクセルと考える人と、4分割、16分割と考える人とでは精度が違うでしょう。
なので、多くの人がセンターとなる目安線を描いて、そこから派生する様に他の位置を見つけています。
しかしながら、グリッド法を使った方法で写真そっくりに描く方法を、下書き部分から包み隠さずに紹介されている動画をYouTube で見つけました。
絵を描く人には特別驚く内容ではありませんが、「絵を描くって簡単だ!」と認識されたらと思うと、それこそAIが自動で描いてしまう現代なので仕方ないことですが、「描くこと」の価値が失せてしまうようです。
超写実絵画にも影響する?
高精細なリアリズムを求めて描かれる超写実絵画は、髪の毛一本まで忠実に再現します。
そのことで、写真そっくりを超えて、まるで目の前に実在するかのような自然さを描こ出します。
しかしながら、そんな技法も、今では超高精細なカメラを使えば、グリッド法でも再現できることが分かります。
その意味では、そんな高精細なカメラでできてしまう以上、「描く目的」を見出すのは容易ではありません。
最も、写真そっくりな絵を描くことが、アートになるのかという議論もありますが、怖いなと思うのはプロを含めて描く意義を失ってしまわないかということ。
YouTube でもグリッド法などで描いている人たちには、この手法が分かりやすく公開されたのを受けて、描く目的や意義を見いだせなくなってしまわないでしょうか。
まして、グリッド法による模写レベルにも至らないこみちの画力など、存在意義すら奪われてしまいそうです。
現代は、ありとあらゆることがもっと簡単な方法でできるので、古典的な手法を続ける意味が失われやすいとも言えそうです。